デジタルカメラ撮影ガイド05

月の写真にチャレンジしてみませんか?

月の写真

月の撮影

秋の風物詩のひとつに、中秋の名月を眺める「お月見」がありますね。お月見と言えば、“すすき”と“お団子”をお供えすることが多いですが、一説によると、稲穂に見立てたすすきで豊作を祈願し、お団子は月と同じく丸いものを供えて、子孫の繁栄を願うものらしいですね。 この撮影ガイドでは、いろいろな月の撮り方をご案内します。風景や建物と一緒に写真に収めてみるのもよいですし、また、望遠レンズを使って月を大きく撮ってみるのも良いのではないでしょうか?

なお、ページトップの写真は平成25年8月21日に撮影した「ブルームーン」です。春分・夏至・秋分・冬至の間にある四季の期間に満月は通常3回ありますが、2〜3年に一度、4回の満月が発生することがあります。この場合の3回目の満月をブルームーンと呼ぶことがあります。良い言い伝えでは“見ると幸せになる”そうです。

ちなみに、1ヶ月の間に2回満月がある場合の2回目や、火山活動で生じたガスなどで月が青く見える現象も、ブルームーンと呼ばれています。 いずれも天文学・気象学上の正式名称ではなく、通称です。

月を撮ると、どのくらいの大きさで写るの?

レンズの焦点距離により写る大きさは変化します。一般的に35mmフィルムサイズに写した場合、焦点距離1000mmで約1cmの大きさ、焦点距離500mmで約5mmの大きさに写ります。(焦点距離の1/100程度)
※地球と月の距離は変わるため、焦点距離以外でも写る大きさは少し変化します。

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画面上に写る大きさのイメージ画像

トリミングして画面いっぱいにする

最近のデジタルカメラは1600万画素など、記録画像サイズが大きいカメラがあります。トリミングを行っても、十分な画素数が維持できます。 例えば、1600万画素の画像を縦横1/2 (画面サイズ1/4)にしても400万画素の画像データです。2Lサイズ程度にプリントしても、きれいな写真に仕上がります。縦横1/4 (画面サイズ 1/16)にした場合でも、100万画素程度の画像データになりますので、ブログやホームページ・SNSへの掲載には十分なサイズです。 後からトリミングをする際には、月を大きく撮影したい場合は、デジタルカメラの記録画素数を最大に設定しましょう。

トリミングの例

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焦点距離500mm画像を縦横1/2にトリミング
(焦点距離1000mm相当)
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焦点距離500mm画像を縦横1/4にトリミング
(焦点距離2000mm相当)

月の模様を撮る時のシャッタースピード・絞り・ISO感度はどのくらい?

夜に月を撮影する際、暗いと思いがちですが、月は意外と明るく輝いています。ISO100/絞りF8.0でシャッタースピードは、満月の月面模様を撮りたい場合、1/250秒〜1/500秒くらいの高速シャッターを使用すると良いでしょう。

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※注意※

上記シャッタースピードは満月の場合です。月は欠けてゆくほど、暗くなります。半月では1/30秒〜1/15秒程度、大きく欠けた三日月・二十六夜などの場合、1/15秒〜1/8秒程度になることがあります。 さらに、空気の澄み具合・月の高さや薄雲が掛かったりした場合など、露出が変化することがありますので、試し撮りを行い、撮影当日の状況に応じて調整することをおすすめします。また、露出違いの写真をたくさん撮ってみるのも良いのではないでしょうか。

【ワンポイント】

オート露出で撮影すると、周りの暗さに影響されて月が明るく飛んでしまうことが多々あるため、マニュアル露出での撮影がおすすめです。 また、スポット測光が搭載されているカメラであれば、月だけを測光して目安にするのも良いでしょう。

AEブラケティングを活用しませんか?

一部のデジタルカメラには、自動的に露出をずらして撮影してくれる「AEブラケティング」機能が搭載されています。 1回シャッターを押すと自動的に露出をずらしながら3枚撮影してくれます。オート露出だけではなく、マニュアル露出でもシャッタースピードを変化させて撮影されますので、活用してはいかがでしょうか?

AEブラケティングの設定

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AEブラケティング設定画面
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設定すると画面にマーク(赤丸部)が表示されます

AEブラケティングの撮影画像

AEブラケティングは1回シャッターボタンを押すと自動的に「補正なし」「プラス補正」「マイナス補正」の3枚を撮影します。

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プラス露出補正(+1.0EV)
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露出補正なし画像
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マイナス露出補正(-1.0EV)

AEブラケティングの設定方法 (連写ボタン搭載機)

AEブラケティングの設定方法 (DRIVEボタン・レバー搭載機)

月の満ち欠け(月齢)と呼び名

月は太陽の位置により満ち欠けがあります。下の写真は満月の画像を加工して作成したイメージです。満月以外の月も撮ってみてはいかがでしょうか。
なお、下図の呼び名は一例です。月齢ごとに他にも多くの名前が存在します。例えば、満月の別名には「望月」「十五夜」「芋名月」などがあります。また、満月の1日後は少し月の出が遅く、ためらって(いざよって)出てくる様子から「十六夜(いざよい)」などと呼ばれています。月は昔から日本人に親しまれてきたようですね。

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月の出没タイミング (目安)

  • ・新月: 月の出=日の出の頃、 月の入り=日没の頃。
    ⇒ 太陽と同じ方向にあるため、撮影には向きません。
  • ・半月(上弦の月) : 月の出=昼頃、月の入り=深夜日付の変わる頃。
    ⇒ 夕方〜真夜中まで撮影可能。クレーターを撮るには、周囲が暗くなり、高い位置にある日没から1〜2時間後がおすすめ。
  • ・満月: 月の出=日没の頃、月の入り=日の出の頃。
    ⇒ 夕方〜翌朝まで撮影可能。建物や風景と撮影する際は、低い位置にあって、少し明るい夕方や夜明け前がおすすめ。
  • ・半月(下弦の月) : 月の出=深夜日付の変わる頃、 月の入り=昼頃。
    ⇒ 真夜中〜朝にかけて撮影可能です。少し早起きする必要があります。

詳しい月の出没時刻や方向・高さは国立天文台ホームページなどで調べることが可能です。

国立天文台ホームページ[写真]

国立天文台 天文情報センター 暦計算室[写真]
※「各地のこよみ」「こよみの計算」をご参照ください。

月の表面(クレーター)を撮ってみましょう

満月は真正面からの光が反射しているため、表面の凹凸がわかりにくいですが、欠けた月を撮影すると、影との境目あたりにクレーターが見えやすくおすすめです。
この場合、地球の空気の層や街灯・街明かりに影響されにくい高い位置の月を撮ると、デジタルカメラでもくっきりと写ります。意外と月の表面は凸凹していることがお分かりになると思いますので、一度撮影されてみては?

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大きな月と木や建物を一緒に撮りたい

雑誌やインターネット上などで大きな月と建物が一緒に写っている写真をご覧になったことはありますでしょうか。実際に目で見た場合とは違った雰囲気があるため、どうしたら撮影できるのか不思議に思われたことがあるのでは?
このような写真は、遠くのものを大きく撮影できる望遠レンズ使用しています。遠近感が小さくなるため、建物や木々と月を同時に大きく撮ることが可能です。これは、圧縮効果と呼ばれます。

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撮影方法

地球から月の距離は平均で約38万4400Km離れています。地球上の被写体は近づくと大きく写ったり、離れると小さく写ったりと変化しますが、月の写る大きさは地球上で移動しただけの距離では、ほとんど変化しません。
また、位置(方角)も大きく移動しない限り、時間経過による月の動き以外ではほとんど変わりません。これらの特性を利用して撮影をお試しください。簡単ですが、撮影に際してのポイントをまとめました。

  • 1. 月の大きさはレンズの焦点距離で調整。(高倍率の望遠ズームレンズが便利です)
  • 2. フレーム内に入れる木や建物の位置は上下/横移動で調整。
  • 3. フレーム内に入れる木や建物の大きさはカメラからの距離で調整。

月の位置・月齢・出没時刻などはインターネットで検索可能です。
あらかじめ、調べておくと撮影場所の選択に役立ちます。

建物や風景を入れて撮影する場合

夜景と一緒に月を入れて撮影したい場合、明るさに大きな差があるため、両方に露出を合わせる事は困難です。月に露出を合わせれば、建物や風景はシルエット、建物に合わせれば月は明るく輝いているように撮影されます。どちらの被写体をメインにするかで判断していただくと良いでしょう。

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建物に露出を合わせた写真
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月に露出を合わせた写真

風景と一緒に撮影する場合は満月がチャンス

月の明かりに照らされた水面の輝きや草原の風景を撮影する場合は、月明かりが明るくなる満月の時が絶好のチャンスです。
なお、この場合、月を画面内に入れると、月の明るさに影響されて画面全体が暗くなりがちですので、必要に応じて露出を補正(プラス側)してお試しください。

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色を調整して雰囲気を変える

【ホワイトバランスを調整する】

基本はオートホワイトバランス(または晴れ・5500K程度)でよいのですが、ホワイトバランスの調整機能を使って、月の色を変えてみると面白いかもしれません。青い月や赤い月などが出来上がります。特に色温度設定機能を使用すると、大きく変化させることが可能ですのでお試しください。
※色温度設定機能が搭載されていない場合は、「電球」や「日陰(曇り)」をお試しください。

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3200K(電球)
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5500K(晴れ)
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8000K(日陰/曇り)

ホワイトバランス変更方法 (Xシリーズ:WBボタン搭載機)

ホワイトバランス変更方法 (Xシリーズ:Qボタン操作機)

ホワイトバランス変更方法 (Xシリーズ:コマンドダイヤル操作機)

ホワイトバランス設定方法 (メニュー内操作)

【フィルムシミュレーション機能でモノクロに】

当社の一部デジタルカメラ(※)にはフィルムを取り替えるような感覚で使用可能なフィルムシミュレーション機能を搭載している製品があります。カラー画像も良いのですが、モノクロ画像も趣があってよいのではないでしょうか?

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フィルムシミュレーション モノクロ画像

フィルムシミュレーション設定方法

おすすめのカメラは?

月は思っているよりも小さく写るものです。目安として、焦点距離300mm以上(35mmフィルム換算)のレンズを搭載したデジタルカメラや望遠レンズを取り付けることが可能なレンズ交換式カメラがおすすめです。
また、絞り・シャッタースピードを自在にコントロールするため、マニュアル露出機能が搭載されているカメラが良いでしょう。

♦製品の購入♦

おすすめのアクセサリー

カメラを固定する「三脚」

望遠レンズを使う場合、少しのズレが大きく影響してしまいます。また、月を大きく撮影する場合、手持ちで探すと手ブレなどで見つけにくいことがあります。三脚にカメラを取り付けて探すことをおすすめします。
ズームレンズの場合、広角側で中心位置に月を配置してからズームするとフレーム内に月を収めやすくなります。
また、三脚に取り付ける際は、手ブレ防止機能ONにしていると位置を合わせにくいため、OFFにすると良いでしょう。

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シャッターショックを和らげるための「リモートレリーズ」「ケーブルレリーズ」

三脚に取り付けていても、シャッターボタンを押す際にカメラが動いてしまうと画像がぶれてしまいます。特に望遠レンズを使用する際は、リモートレリーズやケーブルレリーズをご利用いただくと安心です。

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リモートレリーズ(電子式)
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ケーブルレリーズ(機械式)

リモートレリーズの対応表

ペンライト/懐中電灯

夜に撮影する場合、足元が見えないと転倒するなど危険です。ペンライトや懐中電灯で足元を照らしながら移動してください。また、地図を見たり、メモを取ったりする際にも使えて便利です。

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おまけ

おまけ@ : 画像を合成すると面白い画像ができます

望遠で撮影した月と広角で撮影した風景を重ね合わせて、通常ではありえない写真を作ってみませんか?
一般には、パソコンで合成するのですが、一部のデジタルカメラ(※)には、多重露出機能が搭載されています。この機能は、別々に写したデータを重ね合わせて、一枚の画像を作ってくれます。

※多重露出はFUJIFILM Xシリーズ、一部のコンパクトタイプデジタルカメラなどに搭載しています。

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画像合成イメージ

多重露出撮影の設定方法

おまけA : 地球照写真

地球照とは、地球から反射した太陽光が月面に当たり、うっすらと丸い月がご覧いただける現象です。肉眼でも確認することが可能です。サンプル写真は、明け方の月(月齢 約27日)を撮影したものです。
この写真は、状況に応じて若干露出の調整が必要ですが、オート露出で比較的簡単に撮影可能ですので、機会があれば写してみるのも良いのではないでしょうか?

作例写真は薄く雲がかかっていたため、少しはっきりしない状態ですが、晴れていればもっときれいに写りますよ。

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地球照写真(トリミング画像)

最後までご覧いただきありがとうございました。ぜひ、月の写真にチャレンジしてください。