デジタルカメラ撮影ガイド02

屋外でポートレートを撮影してみませんか?

ワンピース女性のポートレイト
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撮影 : こばやし かをる/モデル : 弓月 ひろみ、林 和美/撮影場所 : 東京ミッドタウン他

屋外ポートレート

ポートレートは日本語に訳すと“肖像写真”となります。一般的に、人物を主題とした写真のことを表します。ポートレートは、室内や写真スタジオで撮影する「屋内ポートレート」(スタジオポートレート)や屋外で撮影する「屋外ポートレート」に大別することができますが、今回の撮影ガイドでは、後者「屋外ポートレート」をメインにご案内します。

ポートレートとスナップの違いは?

同じく人物を撮影する写真には「ポートレート」と「スナップ」がありますね。この二つの違いを簡単に言うと、テーマを “作る” か “探す” かの違いではないでしょうか?
モデルとなる人物に事前に同意を得て、テーマやイメージにあった場所やシチュエーションを準備して撮影するのが「ポートレート」、事前の準備をせずに、日常の光景や一瞬を切り取った写真が「スナップ」と考えるのが一般的でしょう。

撮影場所を決めましょう

屋外でのポートレート撮影をする場合、ロケハンを兼ねて撮影場所を下見しましょう。ポートレートの場合、あまり背景がごちゃごちゃとしておらず、十分背景までの距離が取れる場所が良いでしょう。
また、個人で撮影を行う分には、問題はほとんどありませんが、公園や公共施設などを使用する場合、許可がいる場合もありますのでご注意ください。あらかじめ、管理事務所等に問い合わせていただくことをおすすめします。

ポートレート撮影場所の選び方

ポイント@ まずは、どんな写真が撮りたいのかを考えます。モデルの服装や雰囲気を生かせる場所を探しましょう。
ポイントA 周辺の環境/施設をリサーチしましょう。食事や休憩のできる施設やトイレなども結構重要です。
ポイントB ロケハンは撮影時刻に合わせて行いましょう。その際、太陽の位置も要チェックです。

ポートレート撮影のテクニック

ポートレートの撮影には、いくつかのテクニックがあります。今回は、基本的な10個のテクニックをご紹介いたしますので、ご参考にしてください。

1. 背景をぼかして被写体を引き立たせましょう

ポートレートの場合、人物をメインに撮影します。このため、背景がくっきりと写っていると、人物が引き立たず、印象が薄くなってしまうことがあります。このような場合は、レンズの絞りを開いて背景をぼかすと良いでしょう。また、開放F値の明るい大口径レンズ、特に標準〜望遠系のレンズがおすすめです。 なお、背景をぼかす場合は背景になる物体(壁や柵、木々など)と被写体の距離を離すことも重要です。 背景をぼかす3つのポイントは、@望遠レンズ、A絞り、B被写体と背景の距離です。 焦点距離が長いレンズほど、絞りを開くほど、カメラと被写体が近く、被写体と背景が離れるほど、背景のぼけが強くなります。

2. カメラのアングルを変化させてみましょう

ポートレートでは、カメラアングルも重要になってきます。通常のアングルの他に、脚立などの上から撮影する方法や、撮影者が座って見上げるように撮影する方法があります。カメラのアングルを変えるだけでもだいぶ印象が変化しますね。 上から撮影する場合は、自然と上目遣いになるため、かわいらしい印象になりやすく、逆に下から撮影する場合は少し大人の雰囲気が出やすくなります。

上から撮影した作例写真

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下から撮影した作例写真

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3. キャッチライトで印象的な瞳に

キャッチライトとは、瞳に光を写りこませ、生き生きとした印象を与えるテクニックです。フラッシュ、レフ板などを使用します。顔のアップを撮る場合に良く使われるテクニックです。
また、この場合は瞳にピントを合わせることが重要です。当社X-T1、X-T10、X-A2には自動的に顔を検出する「顔キレイナビ」に加えて、瞳を検出してピントを合わせる「瞳AF」を搭載しています。こちらのご利用もおすすめです。

キャッチライトなし

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キャッチライトあり

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4. 太陽の位置を選びましょう

ポートレートの場合、被写体の真正面に太陽が来る順光はほとんど使いません。モデルさんの目に太陽が入ってまぶしく、目が細くなりがちです。前方45度〜後方45度くらいから太陽光が当たるようにして撮影すると良いでしょう。なお、後方から太陽光があたる場合は、レフ板などで光を当てると顔が暗くなりません。

5. 視線のコントロール

ポートレートでは、人物の目線で印象が大きく変化します。視線をレンズに向けてもらう事が基本ですが、あえて視線を外してみると印象が異なってきます。
例えば、目を合わせることにより家族や恋人のような雰囲気が出てきますし、視線を外すと物思いにふける様子などが再現できます。

6. 人物の大きさや位置・向きを変えてみましょう

人物の大きさや画面内のどこに配置するかでも印象が変化します。全身を撮影するのか、胸から上の撮影、顔をアップで撮影するなどによっても変化します。
被写体の大きさを表す「全身ショット」「ニーショット」「ウエストショット」「バストアップショット」「クローズアップショット」など様々な言葉が存在します。※他の呼び方もあります。

構図名 構図説明 効果
全身ショット 頭からつま先までを納めた構図 スタイルや手足の長さなどを表現したい場合やトータルのファッションを見せたい場合に有効
ニーショット ひざの関節位置で切る構図 服中心のファッションを見せたい場合に有効
ウエストショット 腰(へそ)の位置で切る構図 ポートレートの基本構図のひとつ
バストアップショット 胸の位置で切る構図 表情を見せたい場合に有効。ウエストショットと同様にポートレートの基本構図
クローズアップショット 顔を画面いっぱいに納めた構図 表情を大きく撮り、感情を表現するような場合に有効

また、被写体を中央に配置するか、向きを正面にする・斜めにする・横向き(横顔)にするなどでも、印象が大きく変わってきます。 色々な撮影を試してみてください。

7. 被写体までの距離を変えてみましょう

撮影者と被写体との距離も重要です。例えば、XF56mmF1.2 RやXF56mmF1.2 R APD (35mmフィルム換算 85mm相当)を使用すると、バストアップ写真の場合、被写体までの距離は約1.5m、全身撮影の場合約5.0m、XF90mmF2 R LM WR (35mmフィルム換算 137mm相当)を使用するとバストアップ写真で約2.5m、全身写真で約9.0mの距離となります。

同じ距離から撮影した作例写真

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XF56mmF1.2 R 🔍拡大
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XF90mmF2 R LM WR 🔍拡大
♦ワンポイント♦

被写体に近づいて、やや緊張感を保った撮影をするには、XF56mmF1.2 RやXF56mmF1.2 R APD、少し距離を置いてリラックスした雰囲気の自然な表情やしぐさを撮影するにはXF90mmF2 R LM WRが向いています。

8. 露出を変化させてみましょう

女性のポートレートを撮る場合、少し明るめ(オーバー)に撮影すると良いでしょう。明るく撮影することで肌を白く美しく撮影することができます。また、男性のポートレートの場合は肌の質感を再現し渋みを与えるため、少し暗め(アンダー)に撮影するテクニックもあります。なお、明るさのコントロールには、露出補正機能を使うと便利です。

♦ワンポイント:大胆に明るくした「ハイキー」写真♦

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ハイキー写真とは、適正露光よりも意図的に明るくすることにより、優しい雰囲気・柔らかい雰囲気や幻想的な世界を表現した写真です。
右の写真は、少々白飛びする部分が生じたとしても、大胆に+1.7EV(1と2/3EV)の露出補正をかけて優しげな雰囲気を出した作例です。なお、ハイキー写真の場合は、少し逆光の方がうまく撮れます。

※逆に、わざと暗くした写真は「ローキー」と呼ばれます。

9. フィルムシミュレーション「アスティア」を試しましょう

富士フイルム製デジタルカメラ(*1)には、フィルムを交換する感覚で発色や階調表現を切り替える「フィルムシミュレーション」機能を搭載しています。特に、フィルムシミュレーション「アスティア:ASTIA」は柔らかい諧調で、人物の肌色を美しく再現できるモードですのでお試しください。

フィルムシミュレーション作例写真

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プロビア:PROVIA 🔍拡大
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アスティア:ASTIA 🔍拡大
♦その他、ポートレート向きのフィルムシミュレーション♦

・PRO Neg. STD(プロネガ スタンダード):柔らかな諧調で肌色の質感を表現したい場合に最適です。
・PRO Neg. Hi(プロネガ ハイ):コントラストを高めたややメリハリのあるポートレート向きのフィルムシミュレーション。
・モノクロ+Gフィルター:唇や肌の調子を出し、ポートレートに適したモノクロのフィルムシミュレーションです。

*1 機種により、搭載されているフィルムシミュレーションの種類は異なります。詳しくは、ご利用のカメラの取扱説明書をご参照ください。

10. 被写体(モデル)とコミュニケーションを取りましょう

これは、ポートレート撮影で最も重要なことといっても過言ではありません。コミュニケーションを取りながら撮影すると、豊かな表情やしぐさを引き出すことが可能となると思います。積極的に声をかけて、モデルさんとの信頼関係を築くと良いでしょう。

コミュニケーションを取って笑顔を引き出しましょう

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おすすめのカメラ/レンズは?

ポートレート撮影の場合、背景をぼかすため明るいレンズを搭載したカメラがおすすめです。

♦製品の購入♦

おすすめのアクセサリー

外部フラッシュ

瞳にキャッチライトを入れたり、太陽の位置で影が出たり(逆光やトップライト)するような場合に使用します。内蔵フラッシュでは光量が足りない場合がありますので、外部フラッシュを準備していただくと良いでしょう。

♦製品の購入♦

レフ板

太陽光を反射させる板です。反射光を被写体の顔に当てて明るく撮影したり、顎の下にできやすい影を抑えたりなど、色々な用途があります。また、レフ板の反射光を使って瞳にキャッチライトを入れることも可能です。

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レフ板
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おまけ

おまけ@ : ソフトフィルターで幻想的な写真を撮る

レンズの先端にソフトフィルターを取り付けて撮影すると、柔らかく、幻想的な写真に仕上げることが可能です。 レンズのフィルター径に合わせてご用意ください。

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ソフトフィルターなし
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ソフトフィルターあり

おまけA : 電子シャッターを活用しましょう

当社X-T1、X-T10には最高1/32000秒の超高速シャッターが使える「電子シャッター」を搭載しています。この機能は、晴天屋外でポートレート撮影する際、非常に有効な機能です。
例えば、明るい屋外で絞りを開いて撮影する場合、メカニカルシャッターでは1/4000秒までしか使えません。このため、絞りを開いて背景をぼかすことが困難な場合があります。
また、ダイナミックレンジを400%など広くしたい場合、ISO感度を上げる必要がありますが、この場合でもシャッタースピードを高速に設定することにより、絞りを開いて背景をぼかすことが可能です。

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X-T1 + XF56mm F1.2R
絞り優先AE F1.2 1/10,000秒
+0.7補正 ISO400

最後まで、ご覧いただきありがとうございました。ぜひポートレート撮影にチャレンジしてください!