GFX100Sで撮る、北海道・美瑛の秋の終わり、冬のはじまりGFX100Sで撮る、北海道・美瑛の秋の終わり、冬のはじまり

December 16,2021

GFX100Sで撮る、
北海道・美瑛の秋の終わり、
冬のはじまり

CASE STUDY 03 :

Kei Maeda

アートディレクターとしてデザインの仕事を手がけながら、フォトグラファーとしても活動する前田景さん。広告、書籍、音楽のアートワーク、ウェブ、プロダクト、展示やイベントなど、その内容は多岐にわたります。また、写真を撮るうえでは、北海道・美瑛町を拠点に風景写真家として活動していた祖父と父親から、これまで多くの影響を受けてきたそう。2021年には美瑛の雪景色をうつした写真展「COLD BLUE」をBLUE BOTTLE COFFEE SHIBUYAにて開催しました。

今回はそんな前田さんに、富士フイルムの最高級ミラーレスカメラ「GFX100S」で、雄大な丘のまち・美瑛の冬景色を撮っていただきました。美しい風景写真とともに、これまでの仕事や表現、そして今の暮らしについて語っていただいたインタビューをお届けします。

PROFILE
前田景
前田景  Kei Maeda
1980年生まれ、東京都出身のアートディレクター、フォトグラファー。多摩美術大学卒業後、広告代理店を経て、2015年より祖父であり風景写真家である前田真三のつくった株式会社「丹溪」に入社。広告、書籍、ウェブなどのデザインを手がけながら、フォトグラファーとしての活動も開始する。2017年に初の個展「WHITE ROOM」(東京・gallery fèveほか全国4ヶ所)、2021年に「COLD BLUE」(BLUE BOTTLE COFFEE SHIBUYA)を開催。また、妻である料理家たかはしよしこのレストラン「S/S/A/W」のクリエイティブ・ディレクターも務める。2020年に北海道・美瑛町に移住。デザイン、写真の仕事と並行して前田真三写真ギャラリー「拓真館」のリニューアルを計画中。

アートディレクターの仕事と、写真を撮ることは、僕のなかでは一体なんです。
写真を撮ったら終わりじゃなく、それを印刷物や展示のようなもうひとつの“表現物”に変えていくのが、大事なことだと思うから。

「最初はイラストレーターになりたかったんですよ。でも、学生の頃にアートディレクターの人に話を聞いたら、『君はアートディレクターになった方がいいんじゃない? そうすれば絵も写真もデザインも全部活かせるよ』って言われて。当時から色々な表現方法でものを作っていたので、それが全部できるならと広告の制作会社に入ったことが、今につながっていますね。写真の撮り方も、仕事をするなかでだんだんとプロの撮影現場から学んでいって、個人の仕事としては、撮影からデザインまでをトータルで依頼されることも増えていきました」
そんなとき、父親である写真家・前田晃さんとともに北海道の美瑛町を訪れた前田さん。そこで撮影した雪景色をポストカード集としてデザインすると、周囲からの反響がとても良かったといいます。
「今までの作品のなかで一番いい、と周りの人に言ってもらえたのが印象に残っています。自分で撮った美瑛の雪景色が、紙にそのままのったような感じが僕自身も気に入っていて。やっぱりアートディレクターの仕事と、写真を撮ることは、僕のなかでは一体なんですよね。撮って終わりじゃなく、印刷物でも展示でも何でもいいけれど、写真を何かの表現物にして世に出していくっていうことが大事なのかなと思います」

撮った写真をどう使うかということに意識が向くのは、アートディレクターだからこそ。“写真家になる前の人生の方が、写真を撮るうえで重要だった”という祖父の言葉が、僕自身にもつながっていると思います。

前田さんの祖父である真三さんは、40歳を過ぎて写真の世界に入り、風景写真の第一人者となった人。そして父である晃さんも、風景写真家として自身の作品を発表しながら、真三さんの展覧会や写真集の出版を行っていたそう。そんな2人の写真家を見て育った前田さんは、その姿にどんな影響を受けたのでしょうか。
「気づかないうちに自分の基準になっていました。大学の頃、教授に自分の写真を見せたときに『すごく絞ってるね』と言われて。無意識に、風景の広い範囲にピントが合うように絞って撮ったり、きっちり水平にしたり、祖父がやっていたような撮り方をしていたんです。構図の四隅を意識することや、被写体に出会った瞬間の感動をそのまま撮るような感覚も、やっぱり自然と影響を受けていますね」
写真家として活動する前は、サラリーマンとして商社で働いていたという真三さん。さまざまな経験を重ねてから本格的に“写真”に取り組んでいったという意味でも、前田さんとの共通点を感じます。
「祖父がよく言っていたのは、プロとして写真を撮りはじめた後の人生より、それ以前の人生の方が、写真を撮るうえでは重要だった、ということ。僕自身も、色々なことをやってきたからこそ、今のような写真の撮り方だったり、物の見方が培われたんだと思うんです。撮った写真をどう使うかということに意識が向くのも、アートディレクターという視点があるから。7年前から北海道の野菜や果物を季節に沿って撮影して、料理家の妻(たかはしよしこ)と一緒にオリジナルの“お野菜カレンダー”を作ったりもしています」

東京に住んでいたときはわからなかった土のこと、季節のこと。
美瑛に来てから、当たり前のことを学び直しているんです。

2020年の春、前田さんは北海道・美瑛町に家族3人で移住し、これまでの環境をがらりと変化させました。世田谷で生まれ育った前田さんにとって、北海道での暮らしは「東京とは180度とまでは言わないけれど、170度くらい違う日々」だといいます。
「都会ってやっぱりインフラが整っていて、誰かにやってもらっていることがすごく多いんですよね。でも、北海道に来てからは家の周りの草刈りや除雪はもちろん、わからないことが多いから色々なトラブルが起きるんです。それで近所の人を頼りながら、今まで考えてなかった土のことや、自然のことを改めて学ぶようになって。冬はすべてが凍っているから、春になって雪がとけると、初めて小川に水が流れているのを見るんですよね。それを見て“春の小川”ってこういうことなのか、と実感したり(笑)。写真を撮っていても、毎日すごいスピードで季節が変化していくのを感じるんです。美瑛での暮らしを知れば知るほど、去年は見えていなかったものが見えてくる。逆に地元の人にとっては、丘の風景や畑の美しさって当たり前すぎて特別なものじゃないんですよね。だから、“こんなに美しいところに住んでいるんだ”って、いつもフレッシュな気持ちでいたいなと思います」

美瑛の風景、食、写真、展覧会……
これまでやってきたことをテーマパークのように結集させて、「拓真館」をアップデートする。
そういうことができたら、すごく面白いんじゃないかなって。

前田さんが美瑛に移住したのには、大きな理由がありました。それは、祖父の真三さんが1987年に開館したフォトギャラリー「拓真館」をリニューアルすること。コロナ禍で計画がずれこみながらも、今はデザインや写真の仕事と並行して、歴史あるギャラリーを進化させようとしています。
「祖父が98年に亡くなってから、全国の展覧会や写真集の出版もだんだんと減って、拓真館への来訪者も年々少なくなっているんです。昔は“美瑛といえば拓真館”っていう存在だったのが、やっぱりフォトギャラリーとしてのあり方が当時のままだと、時代に合わなくなっていく部分もあって。祖父の写真の価値を再発見できて、さらに空間としてもっと魅力的な場所にしたいっていう思いが強くなったことも、移住の決め手になりました」
そんな拓真館のそばに、今年の夏、妻で料理家のたかはしよしこさんがレストラン「SSAW BIEI」をオープン。北海道の旬の食材、自家菜園の野菜などを使ったコースメニューで、訪れる人をもてなしているそうです。
「妻のレストランがオープンしたことで、拓真館の周りにある広大な敷地をトータルで楽しんでもらうための“食”という新たな別の入口ができました。これからはギャラリーとしても、今の時代に合った見せ方で、内装や額装、展示の構成をもっと工夫していきたいと思っています。前田真三という風景写真家の、価値ある作品に相応しいギャラリーにしていきたい。祖父や父が撮り続けていた美しい美瑛の丘があって、畑の作物があって、それを料理して、写真を撮るってことが、ここでは全部つながっているんですよね。訪れる人にとっても、テーマパークのように色々な体験ができる場所になれば、すごく面白いんじゃないかなって。まだスタートしたばかりですが、来年は前田真三生誕100年の年なので、今はそれに向けてできることを考えています」

GFX100Sは、大判フィルムを使っているような、ゆったりとした心地よさがある。
自然でなめらかな画づくりを表現できる高機能のカメラは、風景写真を撮影して大きくプリントするのにぴったりだと思います。

北海道に初雪が降る頃、富士フイルムのミラーレスカメラ「GFX100S」とともに撮影に出かけた前田さん。コンパクトながら高い性能を持ち、画素数やシャタースピードの速さに優れたGFX100Sで、美瑛の紅葉と冬の山々の風景を記録してくれました。
「ミラーレスカメラを使うのが初めてで慣れるまでに少し時間がかかりましたが、実際撮ってみて感じるのは、一枚一枚をしっかり撮れるカメラだということ。大判フィルムで撮っているようなゆったりとした心地よさがあって、高解像度だけどパキパキしたシャープネスではなく、自然でなめらかな仕上がりを感じました。祖父も長らく富士フイルムのフィルムを使っていたので、8×10や4×5のフィルムスキャンデータを見る機会が多いのですが、GFX100Sの画づくりはそれに近い印象があって自分にはしっくりくるのかもしれません。デザイナー視点で見ると、取捨選択のできる機能の幅の広さも魅力。やっぱりこれだけ綺麗だと、でっかくプリントしたくなりますね(笑)」
ただ、高解像度で綺麗な写真が撮れるからといって「いい写真」になるわけではない、と前田さんは続けます。移住して二回目となる美瑛の冬を撮影しながら、どんなことを感じたのでしょうか。
「性能の高さだけじゃなく、思い描いたイメージが形になるか、どういう質感の画づくりになるのかっていうのが、僕にとっては大事なこと。そういう意味でもGFX100Sは、フィルムの質感への意識を感じますし、自然風景を撮るのにぴったり。秋の終わりはカラマツや白樺の紅葉が最盛になり、畑には秋蒔き小麦の緑が映え、山は白い雪に覆われる。冬を前にした最後の色鮮やかな瞬間が撮れました。美瑛の大きな景色には、ずっと眺めていられるような穏やかさや静けさがある。そこにある自然をそのまま大きく額装して、家のなかでも楽しみたいですね」

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GFX100S<br>GF45-100mmF4 R LM OIS WR<br>GF80mmF1.7 R WR<br>GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

GFX100S
GF45-100mmF4 R LM OIS WR
GF80mmF1.7 R WR
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「FUJIFILM GFX100S」は、ラージフォーマットセンサーならではの豊かな階調表現と浅い被写界深度により立体的な描写を可能とし、異次元の高画質をさらに身近にする画期的なミラーレスデジタルカメラです。

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