INSTAX mini Evoで撮る、「タネト」から生まれる多様な接続面と、コミュニケーションのかたちINSTAX mini Evoで撮る、「タネト」から生まれる多様な接続面と、コミュニケーションのかたち

October 11,2023

INSTAX mini Evoで撮る、
「タネト」から生まれる多様な接続面と、
コミュニケーションのかたち

CASE STUDY 11 :

Okutsu Chikashi(TANETO)

PROFILE
タネト代表 奥津 爾 Chikashi Okutsu
タネト代表 奥津 爾 Chikashi Okutsu
1975年生まれ。東京都出身。オーガニックベース代表。薬物依存症のシンクタンク勤務を経て、2003年夏に「オーガニックベース」を、2007年春に「ベースカフェ」(現在の食堂ヒトト)、2019年に「オーガニック直売所 タネト」を立ち上げる。2013年には長崎・雲仙に移り住み、以来「種を蒔くデザイン展」「種と旅と」「THA BLUE HARVEST」「雲仙たねの学校」など、ライフワークとして様々な企画を手がけている。
https://www.instagram.com/taneto_unzen/
https://www.organic-base.com/taneto/

長崎県南部にある島原半島に位置する雲仙市。もくもくと湯けむりを上げる古き良き温泉観光地である小浜エリアの隣町、雄大な海と畑に囲まれた千々石町(ちぢわちょう)に奥津 爾(おくつちかし)さんが営む農産物直売所「オーガニック直売所タネト」はあります。


近年は雲仙在住の在来種野菜の種採り農家・岩ア政利さんが注目を集め、彼が育てる野菜に魅せられて人気レストランが東京から移転したり、在来種野菜を扱う料理店が増えたり、雲仙の食文化が盛り上がっています。ですが、実は数年前まで、地元では在来種野菜やオーガニック野菜を扱う店がほとんどなかったと言います。そこに一石を投じたのが、奥津さんが2019年に開いた「オーガニック直売所タネト」でした。

今回は、長崎の小さな町から打ち続けるパワフルなアクションの理由や、お店づくり・在来種の継承について学ぶインターン生の受け入れについてなど、タネトにかける想いを伺いました。そして、豊かな感性を持つ20代のインターン生とともに、雲仙・タネトで送る刺激的な日々や在来種野菜の魅力などをハイブリッドインスタントカメラ「INSTAX mini Evo」で撮影してもらいました。

在来種野菜の生命力、逞しさ、おいしさ。この野菜たちは雲仙の土地そのものを表しています。その魅力を直売所でプレゼンテーションして、守っていかなければと思いました。

「僕が雲仙に惹かれ移住を決めたのは、この地で約40年前から自家採種を行う有機栽培農家・岩ア政利さんとの出会いがきっかけです。ストレートに野菜の勢いが逞しく、生命力が強くて、本当においしくて。自然に溢れた雲仙の土地そのものを食べさせてもらっている感覚ですね」

タネトに並ぶ野菜たちは、普段スーパーなどで目にする野菜とは異なり、姿形が一つひとつ様々。個性豊かなこれらは「在来種野菜」と呼ばれ、その土地の風土や気候のもとで長年栽培され続けてきた品種です。育った野菜から種を採り、その種からまた野菜を育てる。とてもシンプルに、自然の摂理に従って栽培されたもの。





「雲仙には希少な在来種野菜の種をひたむきに守り続ける自家採種農家さんや、有機栽培に勤しむ農家さんがいます。けれど一般市場に出荷しても価格競争に飲み込まれたり、形が整った交配種の野菜が重宝されたり…。彼らが育てる野菜の本来の価値が見出されずに終わってしまいます。売れなければ農業を続けていけないし、何十年、何百年と繋いできた在来種野菜のバトンが終わってしまう。そんな末路、絶対ダメでしょう? だから僕らが在来種野菜やオーガニック野菜にフォーカスして、お客さんに関心を持ってもらえる状況設定を作って雲仙の種を守っていかなければと思うのです」

野菜の栽培も、店の仕組みも、効率化で埋め尽くされることに危機感があります。昔から営まれてきた手と手、人と人が交わる大切さを忘れちゃいけない。

「農家さんがどんな野菜を届けてくれるか、その日の朝まで僕らはわかりません。自然のままに育つ野菜だから機械的なルールは通用せず、その分柔軟性を求められますが、何が届くかわからないのも楽しみの一つ。農家さんから野菜を受け取ったら、新鮮なうちにしっかり売れるように売り場づくりを徹底します」

何ごとも効率化や自動化が優先される今の時代だからこそ、昔から営まれてきた手と手、人と人が交わる大切さを忘れてはいけない、と奥津さんは語ります。

「野菜にも言えることですが、店の機能や仕組みが効率重視で構成されても正直つまらない。人の気持ちや温もりを感じられない“機械的な生産と交換”で埋め尽くされる世の中に危機感もありますね。決して効率化を否定するわけじゃないけれど、僕はやっぱり声を出してその時々の地域の風土や地元の種採り農家のこと、彼らの野菜と種をみんなに紹介したいし、楽しく気持ちよく通ってもらえる場所をつくり続けたい。小売店って、そういう幸せな出会いを作ることが本来の役割じゃないですか?」

集まる人と想いがうまく交わる接続面づくりを大事にしています。“地域のいいものを買える場所”をつくる醍醐味を伝え、僕らのような店が増えてくれたらうれしいな。

奥津さんはタネトで県外の料理人やお店を招いたイベントを多数企画しています。春に開催された「種を蒔くデザイン展2023」では、解剖学者・養老孟司さんやアーティスト・大竹伸朗さん、ファッションデザイナー・皆川明さんなど、錚々たる顔ぶれが集まりました。直売所としての機能だけでなく、人と人の出会い、気づき、学び、新しい物事につながるきっかけまで惜しみなく与えるのが奥津さんのすごいところ。日頃からどういうスタンスで物事に取り組んでいるのでしょうか。


「いかにいい“接続面”をつくるかに集中しています。その作業の積み重ね、ですね。この直売所は、地元で採れた有機栽培の野菜が欲しいと思っているお客さんと、そんな野菜を届けたいと思う地元農家さんの接続面で、その中で在来種の種について知りたいという人の接続面にもなっています。イベントではまた違う人たちとの接続面づくりになるので、どういう人たちが何を求めているのか、集まる人同士の掛け合わせについては徹底的に練り上げますね。あと、タネトのような店が増えてほしいという願いもあるので、本州や北海道など遠くの地で共感し合える人にも接続面をつくっていきたいです。こういう店が地方で成り立つことを僕らが証明し続けながら、“地域のいいものを買える場所”をつくる大切さと醍醐味を伝えていきたいと思っています」

接続面づくりは、“未来の橋”になる。いい橋を架ければ、みんなが自由に橋を渡って目指す場所へ行けるし、何か面白いことだって生まれるはず。





2021年5月から継続的に、タネトでは小浜町の温泉宿「湯宿 蒸気家」との共同プロジェクトで20代限定のインターンシップを展開しています。プログラムの内容は以下のとおり。
2〜3週間蒸気家に宿泊し、温泉宿のInstagramを投稿しながら、週に5日タネトに通って在来種野菜の知識や野菜の扱い方、仕入れから売り場づくり、接客、運営まで、店舗経営のノウハウを磨いていくというもの。これも奥津さんが次世代を担う若者に向けて設けた、一つの接続面なのでしょうか。



「雲仙の在来種野菜について知りたい」とN.Y.から参加した料理人のインターン生と、その時に提供されていたランチメニュー。

「うれしいことに、うちのSNSを見て『タネトのような店を自分もやってみたい』と興味を持って来てくれる若い子たちがいて。彼らがこういうお店をやると面白くなるし、未来が明るくなっていいなと思うんです。やる気と土地に対する愛情さえあれば、始めることは決して難しいことではありません。運営を続けるうえで大事なコツがあるから、熱意のあるインターン生にはとことん伝授しています」



インターンシップは1名ずつの交代制。引き継ぎ時に仲が深まったり、卒業生同士が別の場所でつながったり、
タネトの縁が全国各地に広がっている。


約3年で40名を超えるインターン生が参加し、卒業後、それぞれのフィールドを切り拓きながら全国各地で活躍しています。例えば、オーガニック野菜の無人販売店を立ち上げた人、パンと焼菓子のお店を開いた人、オーガニックのお弁当のケータリングをはじめた大学生、新しいスタイルの獣医を目指す国立の大学生も。タネトでの学びが次のステップにつながっているのです。

「僕が常々考えている接続面づくりは、“橋”とも言えます。それこそ、SNSで表面的なことをのべつ幕なしに発信するのは、僕の橋の架け方じゃない。目指すのは、もっと手触りや温度感、本質がきちんと伝わるような橋です。いい橋を架ければ、その後みんなが自由に橋を渡って目指す場所へ行けるし、そこで出会う人同士で何か面白いことが生まれることだってあります。僕が一番うれしいのは、自分が企画したイベントで出会った人たちが別のどこかで組んだり、次の新しい物事を起こして結ばれていたりするのを見るとき。インターンシップに参加した子たちが各地で活躍する姿もそう。僕がかけた橋が“何か面白いこと”につながった証しだから」



カメラマン、菓子職人、サラリーマン、大学生など、住む場所もキャリアも様々なインターン生たち。

光や色彩、情緒的なムード。一期一会の瞬間をその場で形に残せるINSTAX mini Evoは、一対一のコミュニケーションツールになりますね。こういう手触りや温度感が人生を豊かにすると思います。





奥津さんは娘の愛子(かなこ)さんとともに種を守り継ぐ農家・岩アさんの畑へたびたび訪れ、今の畑の状況を自分の目で確かめることも大切なライフワークにしています。エネルギーに満ちた大地と作物に囲まれた日常のワンシーンを、富士フイルムのハイブリッドインスタントカメラ「INSTAX mini Evo(以下略:Evo)」の世界観で映してもらいました。

「ちょうど年に一度の種の採種時期だったので、みんなで種を採って保存する作業の様子を撮影しました。岩アさんの畑は娘、タネトの店内はインターン生の子が撮ったもの。僕らの世代はチェキって懐かしい感覚で、どんな写真に仕上がるか、プリントするまでの間ちょっとドキドキする感覚も好きで。逆に20代のスタッフにはチェキに初めて触れる子もいて、撮影後すぐに写真がプリントされるのが新鮮だったみたい」



デジタルカメラとは一味異なり、ボケ感や解像度、光や色味の出方が独特なところもインスタントカメラの面白さ。奥津さんは、機械的な作業ではないアナログ的な魅力や物事の偶然性を楽しめるポイントが、このEvoにはあると語ります。さらにEvoが持ち合わせるデジタル機能もうまく活用し、若いスタッフやお客さんとの温和なコミュニケーションを楽しんでいるそうです。

「プリントする写真を選べたり、プリント画像をデータ化して共有できたり、レンズやフィルムのエフェクトが100通りもあったり、デジタルならではの機能性もあって面白いですね。そして何より、すぐにプリントしてその場にいる人に渡して、一緒に手触りや空気感、よろこびを直に共有できるのが魅力的。Evoを使って、ここに来る人々や野菜の一期一会の瞬間を『はい、どうぞ』と写真にして渡したら、それがコミュニケーションになって、形にも残せますしね。これからの時代、こういうみずみずしい感覚と関わり合いが絶対に大事になるはず。SNSやメールは不特定多数の人に届けられるツールだけど、Evoの写真はもっと親密なもの。“一対一のコミュニケーション”が人生を豊かにするし、この先もずっと残り続けてほしい関係性の在り方だと思います」

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“チェキ” INSTAX mini Evo

“チェキ” INSTAX mini Evo

高級感あるクラシックデザインと、アナログ操作で作品を創り上げる楽しさを盛り込んだハイブリッドインスタントカメラINSTAX mini Evo。

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